前職の思い出話はリアルなうちに書いておいた方がいいというアドバイスを受けたこともあり、9年ほど働いた前職での思い出を振り返ってみます。
2007年夏に入社してからしばらく経つと、シンケンがつくっていたようなOMソーラーやそよ風などのパッシブソーラーシステムを搭載した住宅はどんな流れで発展してきたかが何となく分かってきました。
そしてOMソーラーが全国に広がっていった黄金期に、シンケンは圧倒的に美しい住宅を鹿児島でつくり続け、その写真が全国紙の一面広告や、全国のOM工務店の見学会のチラシに使わていたこと、その黄金期に、OMソーラー協会(現・OMソーラー株式会社)代表だった小池一三さんは美しい写真(シンケンの家率高し)で右脳を刺激すると同時に、印象的なコピーとともに、学校の先生を代表とする意識の高い層にヒットするようなイラスト(大橋歩さんを多用されていたのが印象的でした)などを使ったわかりやすい解説を行うという素晴らしい広報戦略をとっていたことなども分かってきました。
今でもそうしたパッシブソーラー系の木の家をつくっている会社さんのホームページやチラシを見ると、OMソーラーの黄金期につくりあげられたコピーが源流になっているようなイメージづくりや表現が散見されます。
それぐらいOMソーラーの広報戦略は優れていたのだろうと思います。
だからこそ、「OM的な広報戦略ではない、もっと新しいやり方を」それが徐々に私の中で形づくられてきたアイデアでした(今でもその思いは強いです)。
OM的な木の家のイメージを払拭した、斬新な印象を与えられる広報をしてみたかったのです。
「全国に名を轟かすような家をつくっているのだから、それなりの広報をしたい。きちんとした仕事をしているデザイナーさんを探したい」という思いも強く、色々と情報収集していました。
そんな頃に前後して、鹿児島市住吉町に「DWELL」という昔からの石蔵を改装したカフェ併設のショップが現れました。そして、どうやらあの石蔵(DWELL)は、東京で「Landscape Products」というインテリアデザインや家具製作で成功している鹿児島出身の中原慎一郎さんという人が経営するカフェ併設のショップで、一角にある事務所には「Judd.」というフリーペーパーを手がけているデザイナーさんも入居している、ということが分かってきました。
そのフリーペーパーはすごく洗練されていて、デザインをお願いするにはうってつけではないか、と思いました。(後に様々なデザインをお願いすることになりました。)
またしばらくすると、その「DWELL」は、「Factory1202」という鹿児島市本名町にある家具工房と繋がっていることも分かってきました。
というか、これは後で分かったことですが、「DWELL」は「Landscape Products」の中原さんと「Factory1202」の川畑さんの共同経営で、実際に現場で店長を勤めていたのは「Factory1202」の川畑さんでした。
そして、
シンケンの家の室内の意匠に「Factory1202」のようなデザインを採り入れたら、これまでにない木の家でこれまでにない広報ができるんじゃないか!
そんなアイデアが浮かんできました。
ちなみに私は入社以来ずっと広報室なので、家づくりの現場にそれまで直接関わっていません。現場に関わってない奴がいきなりそんなことを言い始めたら社内の風当たりはけっこうきつそうです。。
そうした中、僕の中学時代の同級生から電話が鳴りました。長らく連絡をとっていなかった彼は、多忙な医者で、家庭を持ちつつもサーフィンやスケボーに入れ込んでいるというかっこいいライフスタイルを持った男になってましたが、その彼が「シンケンで家をつくりたい」とのこと。
電話がかかってきた時にすぐ隣にいた営業のY氏(シンケン歴代NO.1の営業マン)を紹介しました。
広報の仕事をやっていると、「どういうお客様か」ということがいつも気になります。なぜなら、多趣味で人生を謳歌しているタイプのお客様の家は、いい取材対象になる確率が高いからです。
施主はそういう目で見るとかなりイケている私の友人、しかも営業は一番話のしやすいY氏。これはもう「Factory1202」を投入するしかないでしょう、ということでY氏に相談し、お客様に提案してもらうことになりました。さらにY氏のお客様で鹿屋で計画中の家にも「Factory1202」の家具を提案してもらうことになりました。
社長は新しい試みには寛容な人なので、私からOKをいただいたように記憶しています。
そんなきっかけから始まり、何と最終的には「Factory1202」の川畑さんを始めとするスタッフ3人がシンケンに入社することになったのですが、この続きはまた次回に書きたいと思います。
※なおちょっとややこしいのですが、文章中の石蔵のお店「DWELL」は現在「GOOD NEIGHBORS」と名前を変えて同じ場所にあります。現在「DWELL」の名前は私と同時期にシンケンを退社した川畑さんが引き継ぎ、インテリアデザインや家具を手がける工房として運営されています。
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