そうして川畑さん達が入社してきた後、シンケンの家を舞台に新しくて面白い試みが繰り広げられるようになりました。
私にとっていい意味で予想外だったのは、川畑さんはそれまで家具製作をメインの仕事にしてきた人でしたが、家のプランを読み解き、さらによくするためのアイデアをどんどん出せる人だったことです。
もともと外と中の関係をどこよりも重視していたシンケンの家に、デッキなどの「半外空間」を中心に、暮らしだったりインテリアだったりの別の視点からの斬新なアイデアが加わるようになってきました。
特に2011年からの福岡進出の際の試みはかなり斬新で、今でも私の思う理想の家づくりと広報のあり方に近いことができていたと思うので、別の機会に詳しく書きたいと思います。
建物の納まりもどんどん更新され、シンケンの家が、もともとそうだったのですが更に、どの工務店が逆立ちしても適わないほど洗練された独自の雰囲気をまとうようになってきました。
川畑さんが入社後何年かすると、川畑さんが関わっていない物件でも「これ川畑さん関わってないの?」と驚いてしまうくらい、そのデザインが設計・施工に浸透してきていることを感じることもありました。
当時、私はスティーブ・ジョブスの伝記を読んでいて、その中の「スティーブ・ジョブスの偉大さは「アート」と「テクノロジー」の融合を成し遂げたことにある」という一節が心に残っていました。
工務店と家具屋さんなどのインテリア畑の人は、自然体でいくと一緒に家づくりの仕事はしにくいと思います。お互いの領域に侵食し出すとそれぞれの価値観や常識にズレがあるので、仕事がやりにくいからです。
でもその両者がうまく協力し合って仕事することができると、新しい何かが生まれるのだろうと思います。
スティーブ・ジョブスにしても、その重要性を理解していたからこそ、本来仲が悪い「アート」(デザイン畑)と「テクノロジー」(技術畑)の融合をなかば強引にやり遂げたのだと思います。
シンケンの中にDWELLが入ってきたことで起こった「建築とインテリアデザインの融合」にはそんな意味があったのでは、と思います。
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